自分が変わってみる

 わりによくある話だと思うが、私が中学生~高校生のいわゆる思春期、反抗期?において、特に母親との人間関係は最悪だった。私たちはお互いに自分が正しくて、相手が悪い、またはそれぞれが相手を自分の思い通りにしようとほぼ毎日、罵り合っていた。私は毎日、毎日この家から早く出て一人で暮らそうと画策していた。ただ、実際に自分の思い通りに一人暮らしが始まった初日には、心細かったことを覚えている。
 そんな関係性は年に数回帰省した時でさえ変わることなく、数十年を経て実家へ戻ってきても若干残っていた。その人の気質、特に私達が相互にもつ「気の強さ」「頑固さ」がいつまでも自分自身を支えていて、お互いをそのままでは受入れないという方向にいつも働いていた。

 しかし、最近二人で一緒に居るときに母親が、私に向かって自分が考えている事や思っている事を正直に、ありのままに話している事に気が付いた。そして、私にそれを強要する事もなく「自分はそう思う」と言っていたのだ。
 そこで、母親に聞いてみた。
私:「何故、今の様な話し方をするようになったの?」
母:「あなたが変わったのよ。」
 ?私が変わった?そうなのか。そうかもしれない、と何となく思い至った。私自身がコーチングを学び、人はそれぞれ違う、という当たり前だが認識できていなかったその事を改めて意識したからだったかもしれない。

 今、私が特に、母親と向かい合うときに敢えて気をつけている事は「話を遮らない」「どうしてそう思ったのか、理由を尋ねる」ということだ。それは、私達が罵り合っていた時代には絶対にしなかった二つの事だ。でも、それを実践する事で、母は自分の思っている事を自由に話し、その理由を私が尋ねる事で彼女への理解を私は深める事が出来るようになっていた。それが、力づくでお互いに相手を意のままにしようとしなくても、お互いが歩み寄る事に実は、繋がっていたのだった。
 
 イソップ寓話の「北風と太陽」の北風の様に、相手を無理やりに自分の意のままにしようとしていないか?
向かい合う相手は、自分の鏡だ。コミュニケーションはキャッチボールによく例えられるが、自分が球を強く投げつけたら相手も強く返してくる。売り言葉に買い言葉、まさにそうなって関係性が破綻する事もある。
 根本的な人間の気質はそう簡単には変わらない。でも、自分の在り方を少し変えてみる。見える景色が変わる様に、人と人との間にある関係性が、少し変化をするかもしれない。
 
 あなたにとって、大切な人との間にある障壁を本当は、どうしたいですか?

2023/8/1