想いを言葉にする事で

 ご夫婦で事業を共同経営をされている方々に、インタビューをさせていただいた。
 私のインタビューは、長年経営や営業活動をされてきた方を対象に、毎回、以下の同じ質問をさせていただく事で、考え方や人との向き合い方は人それぞれで、それが誰かの何かのヒントになる事を願い、シェアをさせていただく目的で行っている。
 ①今のあなたに至るまでの経緯 
 ②「経営する上」で、あなたが大事にしている事 
 ③「人と向き合う時」に、あなたが大事にしている事
 ④あなたが、これからやりたい事
 今回は私がいつもお世話になっている店のオーナーの彼に、インタビューをさせていただいた。
 今まで、店で私が感じていた彼は、いつも静かに全体をみていて、決して事を荒立てない人という印象だった。今回のインタビューで、ここに至る迄には様々な葛藤や経験を積まれ、多くの大切な出会いがあり、色々悩み、考え続けてきて今の彼となった事を知る、私にとっても本当に貴重な時間となった。
 
 その中で、特に印象的だったのは共同経営者でもある奥様について、「自分には無いものを彼女(妻)は多く持っている人で、自分の人生を変えてくれた人で心から尊敬し感謝している」と、何度も口にされる事だった。
 これは私の偏見に過ぎないが、ご夫婦で共同経営されている男性(夫)で、公私ともにパートナーである女性(妻)に対して、感謝の気持ちを持ってはいるものの、公的な場所でそれを表現したり、伝えたりしている方を見かける事は少ない。逆に、女性(妻)から男性(夫)を’公的な場面で立てる意味’を含んで、感謝が伝えられることはある様に思う。これは、日本的な文化の側面だろうか。
 
 彼が語った彼女(奥様)の話も聞きたくなった私は、早速、彼女にもインタビューを申し込んだ。
 彼女は店の中でも華やかで、直接私との接点が無いにも関わらず、必ず声を掛けてくださる明るい方、という印象だった。
 その彼女がインタビューで語ったのは、ご自身が外から求められるポジションを責任感とご自身の美学から、必死でその役割を果たし続けてきた事。その彼女も、「彼(夫)は自分には無いものを持っていて、私に出来ないことが出来る人」と今は全面的な信頼をもって彼のやり方を支える事に徹する、と決めた人だった。
 この2つのインタビューをしてみて、この経営者ご夫婦は、本当にお互いにとことん話をし、お互いの見ている方向・そこからの物事の見え方、考え方を重ね合わせ、まさに一枚岩となって一つ一つの課題に向き合っている事が伝わってきた。
 彼女が「多くの問題は、コミュニケーション不足による誤解なんです」とハッキリ言った事にも、それは現れていた。その境地に至るまで、彼女はずっと内省を続けてきただろうし、いつも、言葉を尽くして語り合ってきたのだろう。トップを務め続けてきた彼女が「私は彼を全面的にフォローをする」と決められたのも、相互に想いを言語化して伝え合い、共有してきたからこその相互信頼があるからなのだろう。
 今回のインタビューをさせていただき、こういう世界が広がる事を理念として掲げている私には、何が出来るだろうかと考え続けている。

 経営者・リーダーのあなたは、共に歩む人との間で、何を最も大切にしていますか? 
 

2024/2/13