なぜその話を「聴く」のか?

  話を「聞く」と「聴く」
 「聞く:音、声、言葉などを耳に感じとる。耳にする」「聴く:注意して耳にとめる。耳を傾ける。「名曲を—・く」「有権者の声を—・く」(出典:Weblio辞書より)とあるように、「聞く」が自然に音が耳に入る感じで、「聴く」は注意してその内容・中身を聴くという様な違いがある。
 
 私:「ちゃんと聴いてるよ!」話し手:「いや、全然聴いてないよ!」と、なってしまうことがある。
私は話の途中で、(何でだろう?)(その話は、さっき言った事と違うでしょ?)等、思ったことがすぐに口に出てしまうため、ついつい話の腰を折ってしまう。そうすると、話を聴いて欲しい人はその話を止めてしまうか、「いつもそうだよね、だからあなたは~なのよ!!」とあらぬ方向へ矛先が向いてしまう。
 本当の意味で「話を聴く」のは難しい。自分としては聴いているつもりでも、自分の内面では自分の考えや想いが、どうしても頭をもたげてくるからだ。コーチになってから、それをつくづく実感している。

 何のために「話」を聴くのか?
 私は「相手を理解するために」話を聴くのだと思っている。コーチングでは、クライアント自身の課題につして、「クライアント」には、①その事がどの様に見えていて、②どう捉えていて、③どういう想いで向き合っているのか。クライアント自身がそう思う様になった背景や原体験まで含め、深く理解しようと向き合っている。その事が、クライアントと同じように見える様になるために聴く。
 職場でも、その組織やチームのビジョンやミッションが各メンバーの責任範囲にまで、どこまで正確で確実に落とし込まれているか。一緒に仕事をする仲間や上司がどういう考えで、どういう想いを持ってこれに取組んでいるか。上司を含め深く相互理解する事は、問題の解決策を探る時、チームの目標を達成する上でも、一番重要だと思う。業務やプロジェクトが、みんなが同じところへ到達できないか、途中でみんなが迷子になってしまうのは、最初の段階で十分に相互理解がなされず、ビジョンや課題等の理解も曖昧なまま、始められてしまっているのが原因だと思う。
 相手の見ている世界を見る様に話を聴く。その聴く目的は何なのか。話を聴く事で、同じ方向を見ているのか、想いを共有できているのか。相互理解が深まる中で、信頼感や安心感が醸成され、組織は強くなり、決断も早くなる。そう考えれば、目の前の人の「話をどう聴くか」がきっと変わってくるに違いない。「あなたを理解したい、知りたい」と、聴く側の態度が変わると、話し手側も「実は・・・」と、胸の内に秘めていた話が出来るようになってくる。聴く側の態度が話し手との関係性を日々更新していく。
 そんな話が出来る関係性を築くために、目の前のこの人と今日も新たな気持ちで向かい合う。この人には、いったい何が見えているのだろう。

 目の前のその人の話を聴くと、その人とあなたの関係性に何が起こると思いますか? 

2024/5/14