自分から近づいてみる事で

 多くの人の中に居る事が、実はとても苦手だ。
 幼い頃は内弁慶といわれたぐらい、家族には横柄でやんちゃだったにも拘らず、1歩外に出ると緊張して声が出せない。学校の授業参観では、答えは判っていても手が挙げられず、帰ってから母親に「何故手を挙げないの!」と叱られた事ばかりを思い出す。
 多くの社会経験を得た今でも、その基本的気質は残っている。その為、初めての方に会う時ばかりでなく、何度もお会いした方とZoomを使って話す時でさえ、終わった頃には緊張で背中は汗びっしょり。誰も、私がそんな小心者だとは思わない程に、その態度はふてぶてしいらしいのだが。

 自分で事業をやろうと決めてからも、その小心者気質が私自身を絡めとっていて、全く動けずにいた。そんな私が自分で事業をやろうと思ったのも不思議なものだ。
 しかし、それで事業が軌道に乗るはずもなく、去年位から自分だけの狭いエリアから出てみようと考え直した。まずは、外に出て人に会う。私自身と私がやりたい事を知ってもらわねばと思い、まずは、興味のある対面式のセミナーに参加した。そこで出会った人と名刺交換したり、出会った人の中で私が興味を持った人と、関りを持つ事に意識を向けてみた。以前の私は、そのセミナーの内容に興味があるだけで、その会場に偶然居合わせた人に話しかけようとは、みじんも思っていなかったのだ。
 
 そこで判った事がある。
 実は、私は人と話をする事が好きだ、ということ。特に1対1で、その人とゆっくりとじっくり話をする事が好きなのだ。その逆で、多くの人の中を泳ぎながら「やぁ、元気?」「最近、どう?」と、広く、浅く、多くの人と関わりを続ける事が難しくて、苦手なんだと判った。それが、私の特性で気質なのだ、と。
 それなら、と自分が興味や関心を持った人を、1人ずつを尋ねていってインタビューを始めてみる事にした。その人となりや考え方を、その人一人に向かい合ってじっくりと話を聴かせていただく。
 そうしているうちに、もう一つ気が付いた。
 自分からその人に近づいていく。その人と胸襟を開いて話をすれば、その方の想いや考えを知るばかりでなく、自分にとって、ヒントとなる事を伺う事もできた。更に、自分の探求心も広がっていくのを感じた。また、私が関心を寄せた人から、他の人を紹介されたり、更に違う場所に招かれたりと、自分のエリアにとどまっていては、決して出会わない人・情報・機会に触れる事に繋がった。
 
 人と出会う、と言う事はこういう事なんだなぁと改めて思っている。その人から学ぶこと、教えていただく事のみならず、自分一人の力では広がらない思いもよらない世界に連れ出してもらう。特に私の様に、多くの人と繋がろうとしない人にとって、自分だけで見られる世界はそんなに広くない。同時に、事業を軌道に乗せたいという、切羽詰まった事情があったにせよ、私にとってそういうタイミングが来たんだな、と思っている自分もいた。他の人の様に、どんどん人に会って開拓して、どんどん失敗して立て直してという様に、私にはスピード感が無い。
 でも、それが私なんだ。ゆっくりでも、自分の納得する様に、納得するペースでやれる今が、自分にとって満足感も高い。それこそが、自分にとって、とても大事な事でもあるんだな、と改めて最近、思えた。
 慌ただしく走り続けていた20・30代は、常に疲弊していて息をする事さえも忘れていたんだろう。
 
 あなたが人と出会う意味って、何ですか? 
 

2024/6/18