神輿行列をみていて

 「ワッショイ!ワッショイ!」あぁ、秋祭りだ。
 快晴の気持ちの良い休日、子供たちの元気な声が聞こえてくる。その元気な声に誘われて、神輿行列を見てみる。元気に叫んでいる声の子は、飛んだり、跳ねたり、笑顔で楽しそうだ。神輿は3つの隊があった。違う町内なのだろうか。
 見ていると面白い事に気が付いた。
 次の隊は「ワッショイ、ワッショイ」と言いながら、進んではいるのだが、その声も小さく、便宜上言っている(言わされている?)だけで楽しそうには聞こえない。同行している大人たちも携帯を見ながら歩いている人、少しはみ出しそうな子を「何しているの!」の様に押したり、列に引き戻したりしている。最後の隊は「ワッショイ!ワッショイ!」と大人の声はするものの、子供たちは押し黙っていて笑顔はなく、神輿をぞろぞろと引っ張っているだけだ。
 最初の隊は、隊自体がみんなが笑顔でワクワクしている様だったのに対し、後の二つは雰囲気がどんよりしていて、とても楽しそうに見えず、行事に「参加させられている」かの様な状態だったのだ。

 それを見ながら、私が過去に働いた組織を思い出していた。その仕事は交通事故の査定処理で、時に通称ヤクザな人が出入りして、わめき散らしたりするような事もあり、重たい雰囲気になりそうなところだった。しかし、少しとぼけた(?)雰囲気もある上司のもと、メンバーは自分の責任範囲の仕事を自由にやさせてもらえて、相互に相談しあえる環境があった。そのため、私が密かに下克上と名付けたその部署は、上下関係も緩く、自分の考えを発言し、自分の解釈が明らかに法的・理論的に間違っていなければ、そのやり方でやらせてもらえた。仕事量も多く、大変な事も多かったが、その雰囲気と責任を持たせてもらえる事で、私は本当に救われたし、自分で考える事で多くを学ばせてもらえた。
 その後、上司が変わった。メンバーが若干変わった事の影響もあるが、その上司はピリピリする様な雰囲気を少し漂わせて、上司の上司を見て仕事をする人の様に感じた。また、私達メンバーに対する指示がハッキリせず曖昧なため、私は自分の責任を果たそうにも、その領域がわからなくなって次第にやる気も失った。他のメンバーもそうだったのか、次第に部署内の空気は仕事内容も相まって殺伐として、みんなバラバラな雰囲気に変わっていった。

 組織やチームの雰囲気や環境などは、そこに属する人の属性や性質、やっている事等の色々な要素によって決まるのかもしれない。しかし、その中で責任や権限が最も大きい人の影響力は、そのご本人が思っているよりずっと大きい。所属する各メンバーの長所を生かし、自ら成長する、又は成長を促す環境を提供する事が影響力の大きい人の役割の中で最も重要な事だ。方向性や期限など最小限の条件等を合わせて、後は見守り、任せきる事が、私は大事だと思っている。最初の上司に学び、次の上司との比較で改めて認識した事だ。

 やって良い事とやってはいけない事を常日頃から子供と共有し、後は大人自身が楽しむ姿を見せる。楽しみ方を見せているのかもしれない。大人自身が心から楽しむ姿を、子供たちは本当によく見ている。楽しんだ想い出が、その人の人生を豊かに彩ってほしい。「子供には想い出を沢山作ってやりたい」と言った父の言葉が、神輿行列をみていて改めて蘇ってきた。

 あなたの人生を支えている大切な思い出は、なんですか?

2024/10/15