本質の解決「本当にその人のためになっているのか」にたつ

株式会社 AWESOME EYE 
代表 菅生としこ 様 

ご経歴

 大学卒業後、トヨタ自動車㈱に入社。入社後2年間は会社が所属する小集団活動を推進する団体の事務局を務める。その後、仕事の進め方を知りたいと考え、自ら仕事の進め方の整理・体系化を行う。社内の女性社員向けに「仕事の進め方(問題解決法)」を教える研修を、上司に提案し採用される。その問題解決法は現在も、広く展開され続けている。
 その後退社し、出産・独立。当時学んでいたコーチング要素を取り入れた問題解決法や部下育成の仕方などを教え始める。子供の成長に合わせて仕事の比重を増やしながら、ワークライフバランスを楽しむ。現在までの、30年間クライアント先の問題解決をしながら、組織開発と人材育成を同時に実現させ、組織の成長を支援し続けている。

  • Q.1.現在に至るまでに、どの様なご経験をされてこられたのでしょうか?
    A.菅生様:トヨタ自動車㈱に入社する直前の面接で、「おじさんは大丈夫ですか?」と聞かれたのです(笑)。あとで振り返ると、小集団活動を推進する社外団体の事務局として年齢の離れた方々との対応は出来ますか?という質問だったように思います。というのも、その社外団体は、錚々たる企業の役員クラス、部長クラスの方が多く、その方々とのコミュニケーションが必須だったからです。その事務局がトヨタ自動車㈱に入って最初の仕事でした。1年目は、1300人位が参加するイベントで集客から当日の進行管理・参加者・出演者管理に至るまで、イベント事務局業務をすべて、係長と自分の2人だけで行いました。あの2年間の事務局業務で本当に鍛えられましたね。ありがたかったです。

     その経験があったので、社内業務に戻った時も誰かのアシスタントではない仕事がしたいと思っていました。その後、仕事の効果効率を上げるための統計手法を教える部署に異動し、1996年ごろ、自分は仕事の進め方(のちに「問題解決8ステップ」と命名)さえ知らいないと痛感し、自分でこれを整理し始めました。そして、“私と同じようにもっと仕事ができるようになりたいと思っている女性はいるはず!”と女性社員対象の「問題解決8ステップ」研修を上司に提案し、展開できることになりました。その後、評判となったこの「問題解決8ステップ」は、女性に限らず、新卒、中途採用、グループ会社向け、海外事業体向けに拡大展開していきました。
     その後、将来のキャリアを考え、退社しました。旅館経営がしたかったのですが、すぐに子供を授かったことがわかり、育児に重点を置くことに決めました。でも、育児しながらも、仕事はしたい!という思いが強くありましたので、少しずつ仕事をしていました。トヨタ自動車㈱時代の元上司から、問題解決研修の依頼をいただいた時はありがたかったですね。子供が育つにつれ、徐々に仕事の割合を増やしていきました。気が付けば30年間ずっと、この組織開発、人材開発の仕事をさせていただいていますね。
  • Q.2.2008年に個人事業主として創業、2016年に株式会社AWESOME EYEを設立されました。会社を経営される中で最も大切にされている事は何ですか?
    A.菅生様:「お客様の為になるのか?」「お客様の先のお客様の為になっているのか?」と言う事を、必ず考えていますね。これは、私が新卒で入ったトヨタ自動車㈱が大事している考え方【お客様第一】が自分にインストールされていて、自然とできていることでもあり、大事だと思っていることです。
     たとえば、お客様からの要望が「研修をして下さい」であった時に、それが費用対効果面や、お客様の本質的な問題解決になっているのか、本当は何をするのがベストなのか、などとついつい考えてしまう訳です。お客様がしたいと思っていることと違う場合もあります(笑)。その結果、私にある程度の裁量を与えていただけるのであれば、表面的な問題の解決ではなく、本質的な問題の解決に繋がるような事をさせていただきます。その時も必ず、「自分自身がこれをやりたい!」になっていないか?長い目で見た時に、「本当にお客様の為になるのか?」という点を、よく考えてから実行しています。これは、組織や人の専門家としての自分へのコミットにもなるので、毎回身が引き締まる思いで関わらせてもらっています。なので、必ず成果を出す!と真摯に愚直にフルパワーで取り組んでいます。
  • Q.3.「お客様第一」と考える菅生様が、人と向き合う時に大切にされている事はどんな事でしょうか?
    A.菅生様:15年位前からでしょうか。自分と他者は見えている世界・思う事は違う、自分と他者は違って当たり前、と常に思いながら人と向き合う様にしています。
     きっかけは子育てでした。自分の子どもであっても子供と自分は別人格だと思った事でした。その後、上司とうまく関係が築けなかった過去の出来事を振り返った時、自分からの一方的な見方しか出来ていなかった、と言う事に気が付いたのです。当時、「相手にはどう見えているのか、相手はどんな景色を見ているのだろう?」と考えられていたら、関係性が変わっていたのではないかと思いました。それから、“自分と他者は見えている世界は違う、違って当たり前、と思えるようになりましたね。
     このことで、自分自身がとても楽になり、意見が違っても見えている世界が違うのだ、と諦めずに向き合い、話ができるようになりました。見え方が違う他者の話を聴けるからこそ、自分には見えていない世界を知ることができ、視野が広がる感じがして、とても楽しくなってきました。今では、自分とは違う人って最高だなぁ~!と思っています。
  • Q.4.今後ご自身がやりたい事はどんなことでしょうか?
    A.菅生様:やっぱり「問題解決」ですね。クライアントの事業における問題、事業を行う組織や人の問題の解決(組織開発)ですね。実は私、“同じ事を長く続ける事は結構苦手なのに、どうして30年も問題解決を続けていられるのだろう?”とある時、思ったのです。でも、「問題解決」といっても、解決をする「問題」も違えば、それを一緒に解決する相手も違う訳です。そして、解決すれば必ず組織も人も事業も成長しているのです。この新鮮さと達成感がここまで、長く続けてこられた理由だとわかりました。 
     当然、同じ事を長くやっていれば、似ている組織もありますが、「似ている」という先入観を持ってやってはいけないと思っています。その先入観を持たずに細かい事まで見ていくと、実は違いがよく見えてきて本当に面白いなぁと思っています。
     それを踏まえると、30年間続けてきた組織開発は私の強みであり、求められている事、喜ばれる事、そして私自身が面白いと感じる事なんですよ。これは今後も続けていきたいと思っています。“組織を機能させること”、と同時に、“事業の問題解決”もしますので、やる事は本当に多岐に渡っています。今後は、より規模の大きい企業や、M&A直後の企業様と一緒に、じっくり腰を据えて組織開発をやっていきたいと思っています。
     
     もう一つは、全く違う仕事もしてみたいと思っています。私は自分が本当に良いと思うモノ・サービスを広めたい!という気持ちがかなり強いのです。なので、それを伝える仕事をしたいなと思っています。そういう意味では、今の仕事でも、“お客様にとってのベスト提案をする”という観点では全く同じですね。
    加えて、他の分野、例えばカルチャーや伝統、自然、食、生活などで、めっちゃいい(AWESOME)!を伝えていきたいです。

One Viewpoint
 菅生さんの「これがお客様の為になっているのか?」という軸に迷いはありません。それはトヨタ自動車㈱社内に流れる精神が原点になっているそうです。
「私、新しい事をするのが大好きなの!」と溌溂と言う菅生さん。その彼女が、30年間、組織開発を続けてきたのは、すべての組織、すべての人はみな違う、と一つとして同じものはないという、曇りのない目と心で日々向かい合あってきたから。「自分と違う視点や意見を持つ人って最高!」と新しいものを受容出来る器を、広げ続けてきたからなのだと思いました。

2023/10/29