メンバー個人の専門性を大事にして、リーダーの仕事に集中する

中小士業診断士・共創コーチ
谷口 英隆 様

ご経歴

 卒業後、5年間建設機械メーカーの営業として勤務後、大学時代に専攻したマーケティングを生かすべく広告代理店のI&SBBDD (当時;I&S)に転職する。生活雑貨担当の営業として、マーケティング・製作・出稿まで全般に関わり、ゼネラルマネージャーとしてもチームを率いてきた。
 定年退職後は、1996年に取得していた中小企業診断士として活動を開始し、また、2022年に取得した国際コーチング連盟(ICF)のコーチングのスキルも活用し、実務キャリアを生かしながらお客様と向き合っている。

  • Q.1.建設機械メーカーの営業職から広告業界への転職はどの様な経緯だったのでしょうか? また、広告業界での勤務中にはどの様なご経験をされ、特に印象深かった事を教えてください。
    A.谷口様 大学を卒業し、建設機械メーカーに営業として5年間勤務しました。しかし、大学ではマーケティングを専攻していたので、それを生かした仕事がしたいなと考えていました。丁度その時に、マーケティング業務の求人を広告代理店が出していたので応募したところ、無事に合格し結局、定年までの34年間勤務する事になりました。私は生活雑貨担当の営業でしたが、クライアント企業1社の広告提案をするにあたり、デザイナー等の専門職の方々を含め総勢10名位で担当します。
     まずクライアントからご依頼があります。そのご依頼は多くの場合はコンペティション(通称コンペ)になりますが、それを勝ち取ると、1か月位掛けて提案を考えます。提案はまず、仮説を立て、その仮説に基づいて市場等の調査を行い、その後仮設の実証を行い、その結果に基づきクライアントへの広告提案を作成するといった手順です。この提案がクライアントに承認されれば、広告物の制作をし、最後は媒体への出稿をして完了になります。
     営業としては、その間クライアントの望む事、依頼事項の方向性と提案の方向性にズレが無いか、設計したスケジュール通りに進んでいるかを把握し、すべての工程に関わり続けます。しかし、営業である私は、担当として数社を抱えているので、これを同時並行で進める事になります。
     この仕事で想い出深い事と言えば、この一通りの業務をすべて担当出来た事ではないでしょうか。この業務における「失敗」とは、出稿(媒体に作成物を提出する)期限に間に合わず、会社として購入した掲載枠に穴をあける事と、コンペに負ける事でした。これらは、会社に損失を与える事ですので、これはどの会社でも担当として責任を持つべき事ですが、これらの失敗をしない限りは私がやりたかったマーケティングを自由に、好きにやらせてもらえた事、何を出しても否定されなかった社風というのが、自分に合っていて非常に良かった事です。私にとってマーケティングの面白さとは、モニタリング等の手段を使って一般の方を相手に実施する事で、世の中の流れが見える事でした。そう考えると、私にとってはこの会社で経験した事すべてが、想い出深く、印象深い事なのです。
  • Q.2.営業職としてお客様に向かい合う際に、意識されていたことはどんな事でしょうか?
    A.谷口様 お客様とは「良好な関係」を維持したいと思って向き合っていました。この「良好な関係」を維持するために、自分が常に意識していたことは「約束を守る」と言う事です。それは、ご要望や時間等すべてにおいて、お約束したことは必ず守ると言う事になります。そのために、お客様の表情や態度、雰囲気等言葉のみならず、その方が発するものをもれなく感じ取れるように対面で向かい合う様にしていました。今は、Web会議等が推奨されていますが、コロナ以前の当時も電話で済まさず、必ずお客様には「会いに行く」事で、良好な関係を作り上げていたのだと思います。やはり、直接、顔を見て話をするために「会いに来る」人には親近感が湧きませんか?
     コロナ禍で人と距離を置かざるを得ない状況になって、対面で人と会えなくなった事でWeb会議システムが発達しました。これは、移動や日程調整にかかる時間等を有効に使えるようになった面は、良いように思いましたが、反面、仕事のスピードは以前と比較ならない程早くなっておりハードになっているのでは、と心配しています。
     お客様の雰囲気や言外の想いなどは、Web会議システムで感じ取る事の難しさを感じるからこそ、「対面で会う」事の意義を再認識しています。また、緊急対応や方針変更にも対応が可能な様に、時間的な余裕をもって仕事の設計をする事の重要性も感じています。
  • Q.3.同じチームのメンバーや専門職のメンバーと協働する際に、心掛けていた事はどんな事でしょうか?
    A.谷口様 自分自身も営業として個人の数値目標を持っていましたが、マネージャーとしての業務も有りました。私の営業チームと言っても、各メンバーは私と同じように、自分の担当顧客を複数持っており、全員がいわば一匹狼的に行動します。ただ、チームとしての数値目標があり、マネージャーとしてこれを達成するために数値のコントロールをする必要はありますが、基本的にチームとしてやる事以外はメンバーに任せていました。何故なら、彼らは自分より優秀だと思っていましたし、みんなできると思っていましたから。 私がチームを率いる際に大事にしていたことと言えば、それぞれのセクション・専門性を大事にする事です。何故なら、どんな人も自分の専門性を批判されたりしたら、やる気を削がれますよね。ですから、その専門はその人に全面的に任せる。みんな大人ですし、必ず自分の責任はやり遂げますよ。私はマネージャーとしてスケジュール管理(進捗管理)をする、と言う事に徹していました。でも、相談を受けたら相談に乗る、と言う態度でいました。
  • Q.4.今までの経験を通してお伝えしたい事や、今後ご自身がやりたい事はどんなことでしょうか?
    A.谷口様 私が中小企業診断士の資格を取得したのは1996年です。その後、退職するまでこの資格を使って直接仕事をすることはありませんでした。退職後から中小企業診断士として活動していますが、今は中小企業診断士協会の仕事や、同業者仲間と仕事を一緒にしながら経験を重ねています。その中で思う事は、この仕事をする前に、この仕事を進める上での人脈を作る事や、きちんと段取りをしてから始めても良かったなと思っています。今後、この様に活動を始める方がいらっしゃるなら、そういう事を自分の経験から伝えたいですね。今後やりたい事は、34年間広告業界で培ってきたマーケティングや人材育成等のビジネスの経験を生かせるような活動に繋げていきたいと思っています。また、コーチとして勉強を重ねていますので、このコーチングというスキルを使って、第2の人生を始める方やご自身の目標を持っている方に対して「気づきを生かす事で自己目標を達成するコーチング」をやっていきたいと思っています。
     自分は中小企業診断士としてコンサルティングを行っていますが、今後はコンサルティングとコーチングが自分のビジネスの2本柱になる事を目指しています。

One Viewpoint
 谷口さんは「きちんと約束を守る」、「相手を尊重して信じる」と言う事を実践されています。その態度は誠実そのものです。声のトーンや立ち現れる雰囲気は穏やかですが、「きちんと」「しっかりと」と言った言葉が数度繰り返される事が表すように、お相手に向き合う姿勢にもその誠実さと自分への厳しさを感じました。その姿勢はコーチングの学びにも現れていて、お客様に提供するコーチングの品質を向上させるためにも、自分のスキルの恒常的なブラッシュアップの為にも、と何度も何度も学び直しをされているのです。

2023/6/9