一人ひとりの違いに目を向け、その人の立場に立って向き合う

税理士・行政書士・産業カウンセラー 仁井田 修 様 

ご経歴

 大学卒業後、自動車部品メーカーである㈱デンソー(当時:日本電装㈱)に就職。約2年間コスト削減の提案と現場との調整をする原価企画業務を担当。その後、家業である保育用品の代理店を手伝いながら税理士を目指して勉強を続ける。29歳で実務経験を積むべく会計事務所に入所、その後独立、縁あって2年前に津島市の会計事務所承継を機に移転。現在に至る。

  • Q.1.様々な職種・業界をご経験ですが、どの様な経緯だったのでしょうか?
    A.仁井田様: 就職を考えた時に、地元愛知に戻ろうと考えていました。そして、日本の基幹産業である製造業に関わりたい、という想いと就職活動時に出会った人達の人間性に惹かれたこと等から、㈱デンソーへの就職を決めました。入社後は集合研修・現場実習があるのですが、GW後~8月末までの工場実習は夜勤勤務もあり肉体的に結構大変でしたね。工場実習中に希望業務を訊かれる面接の中で、実習と並行して簿記の勉強をしている事や、企画業務を希望する旨を話しました。配属は希望した通りの企画でしたが、クリエイターの様な企画ではなくコスト削減を提案し、現場と調整する原価企画業務でした。その後、両親の経営する保育用品の代理店を母親が亡くなった事を機に手伝う事になりました。その時も、家業の営業や経理等をしながら、税理士になるべく勉強を続けていました。29歳頃に結婚を考えた事もあり、家業は妹夫婦にバトンを渡し、実務経験を積むために会計事務所に転職。その後約20年間、東海市の会計事務所でお世話になりました。その間に税理士の免許を取得。在籍中は結構自由にやらせて頂けたので、自分が興味を持ち、面白いと思う経営指導についても多くの経験を積ませていただく事が出来ました。
     その後独立したのですが、津島市に開業されていた先生からのご依頼で、約2年前に事務所の承継を兼ねて、津島市に事務所を移転しました。これも、ご縁あっての事ですね。
  • Q.2.税理士になられてご自身で経営されることになられましたが、経営上で一番大切にされていることはどんな事でしょうか?
    A.仁井田様: サラリーマンはあくまでも組織の中での役割、業務であり、自分の足で立っている様な感覚でした。しかし、経営者となって感じることは、自分一人では大したことが出来ないということです。神輿の上に担ぎ上げられている様な感じで、つまりは土台の部分を支え、協力してくださる協力者のおかげで、経営者としてやっていける感覚です。そのため、関係者の方々や従業員の方との関わり方やその人を生かす、というのは本当に大事だと思っています。税務や経営に関しての指導実務は、私自身でやるべきことであり、やれることです。でも、従業員は私には出来ない事をしてくれる。私が気づかない事やお客様との対応においても、常々フォローをしてくれている。従業員の皆さんが居なければ出来ないし、皆さんがいるからこそやれている。ですから、従業員の方とは上下関係ではなく対等な関係だと私は思っていますし、皆さんもそう思ってくれていると感じています。今ではいい関係が築けているんじゃないかな(笑)
     また、「人とのご縁」も大切にしたいと思っています。具体的には、自分が取引を希望して営業をしていてもそこからは、なかなか引き合いは来ない。でも、そういう姿勢を取り続けている事で、思わぬところからお声を掛けていただいく事があります。2年前の事務所承継のご縁もそうでした。
     「縁を大切にする」には、まず種を蒔く必要があります。しかし、自分が蒔いた所で必ずしも芽が出るとは限りません。逆に、自分では種を蒔いていない別の所に運ばれた種が元気よく育っていた、という場合もあります。これは、経営者になってから特に強く感じる不思議な感覚ですね。
  • Q.3.協力者と考える従業員の方々やお客様等、人と向き合う時に大切にされている事はどんな事でしょうか?
    A.仁井田様: 相手の立場に立って考える、という事ですね。「相手の立場になる」とは、例えばお客様との関係で言えば、お客様が本当に求めていることに応える、という事です。同じお客様であっても、状況によって「厳しい意見を言って欲しい」と思われているときと、「寄り添って話を聞いて欲しい」と思われているときがあります。厳しいのが正しい、寄り添うのが正しいというのではなく、相手の立場に立ち、バランスを見極めながら接するように努めています。
     私自身は人間の性(さが)について考え続けてきたところがあります。人間には綺麗な部分と、醜い部分の両面がある。価値観も各々異なる。それが故に判りあえない部分があり、判り合えないことがあたりまえなのです。そうであるからこそ、「相手の立場に立つ」努力をして、「相手の求める事」に対して耳を傾け、理解しようとすることが大切だと思っています。
     そのような関り方を続けていて社長からプライベートな話が出てきた時には、一段関係性が進んだと実感します。社長は孤独で、弱音を吐く事が出来ない方が多い。そんな時に、「その気持ちに共感する」とともに、「解決のヒントを提供する」ことができればよいと思っています
     経営者は人間であり、意思決定の場面において「判断」が介在する。不確実な状況の中、情報を集め、「判断」をしないと前に進めません。100%の正解は事前にはわかりません。だからこそ「個性」があるわけで、多様性にもつながります。
    幼い頃から私は、他人は理解し辛いと感じていました。だからこそ、「人を理解したい」し「人を尊重したい」という思いが強いのです。従業員にも、「これはあなたにしか出来ない、替えはきかない」という様な事も伝えています。あまり、ストレートに言われると荷が重い、と言う人もいますので伝え方は考えますけどね(笑)
  • Q.4.今までの経験を通してお伝えしたい事や、今後ご自身がやりたい事はどんなことでしょうか?
    A.仁井田様: 基本的に会社組織は機能組織であり、規律と厳しさが必要とは思います。しかし、人との関係性においては、もう一歩踏み込みたいと思っています。全体を包み込むような優しさというものでしょうか。これらの両立があってこそ、お客様は満足し、従業員は安心して生き生きと仕事ができる。従業員には、「みんなで豊かになっていきましょう」という話をしています。「豊かさ」とは金銭的な豊かさだけではなく、心の豊かさも含みます。
     今後はインプットもさることながら、アウトプットが特に大切だと感じています。私が得意とする税務的・経営的なアドバイス、人の心のサポート、人事コンサルティングを発信することは、社会貢献であり、私たちみんなが豊かになっていく事に繋がっていくのだと考えています。
    会計事務所業務を中心に、心のこもったサービスを提供しつつ、豊かさの輪を拡げていければよいですね。

One Viewpoint
 人はそれぞれみんな違う、それが大切で誰もが尊重されるべきであるという強い信念を感じるインタビューでした。お父様が饒舌に会話されるのを目の当たりにした幼少期から、自分自身のみならず、他者を観察し、理解したいと思い続けて今もお客様や従業員の方々と向き合われています。そんな仁井田さんの人事コンサルティングは、単なる制度ではなく人の違いを尊重される提案になるのでは、と思います。

2023/7/12