これ!と定めた事を一極集中。
導かれた出会いを、自力で広げ全力邁進中

パーソナルコーチ
西尾 幸枝様
西尾 幸枝様
ご経歴
学校卒業後、クレジット会社に勤めながらスポーツクラブに通う中で、エアロビクスのインストラクターの資格を取得。29歳からエグザス・コナミ・ルネサンス等のスポーツクラブでインストラクターとして働き出す。並行してシナプソロジーやストレングスファインダー、コーチングの勉強も開始。コロナ禍で、一旦インストラクターの仕事がすべて無くなった時に、コーチングの仕事の割合を増やして現在に至る。介護予防教室の講師等もしながら、コーチングのスキル向上のための様々な機会に参加し、邁進中。
- Q.1.現在に至るまでの経緯をお伺いします。A.西尾 幸枝様(以下 西尾様)
:卒業して初めて働いたのはクレジット会社でした。その会社在職中に、スポーツクラブに通っていました。ある日、たまたまエアロビクスのクラスに参加してみたら、ハマってしまって。そのうち、インストラクターになってみないかと誘われ、エアロビクスインストラクターになりました(笑)。エアロビクスは特にそうですけど、体力勝負のこの世界で、29歳のインストラクターデビューは遅いのですが、これから仕事が増えていくかも?と期待が持てたのです。慎重な私でもびっくりなのですが、僅か3ヶ月後には、二足のわらじだったクレジット会社を退職して個人事業主となりました。次第にエグザス・コナミ・ルネサンス等のスポーツクラブでクラスも持たせてもらえるようになり、順調に仕事が増えていき収入も安定していきました。
そのルネサンスが開発したシナプソロジー®(脳活性化プログラム)を知ると同時に、シナプソロジーインストラクターの資格を取得した時の講師(教育トレーナー)の方によって、ストレングスファインダー®(クリフトンストレングス®)やコーチングにも出会うことになりました。その方はこれまで見てきた「講師」と呼ばれる人とは、受講者との関り方がひと味違うなと感じていました。シナプソロジーの講座に参加される方が会社経営者や管理職の様にステータスの高い人が受講者であっても、「私が先生、あなたが生徒」という感じで上から教えるという感じではなく、逆に腰が低い訳でもなく、相手を尊重して対等に関わっている様に感じていました。
しばらくして私もインストラクターを養成する教育トレーナーという立場になった頃、「これから教育トレーナーとして活動する上でコーチングは役に立つと思うよ」と、勧められたことがきっかけで、2018年頃からコーチングの勉強を開始しました。参加したコーチングプラットフォームのコミュニティは、どんな事も話せる安心安全の場で最初は凄いなぁと驚き、学びを進めるうちにここに出会えて本当に良かったと思うようになりました。
その中で発生したコロナ禍。スポーツクラブの営業が全て停止となり、エアロビクスインストラクターとしての仕事がすべて無くなりました。実はその少し前から、体力勝負の仕事をこれからも続けていくのは厳しいなと思い始めていました。これからは知識を基に働いていこうと考え、シナプソロジーのインストラクターを養成する仕事に力を入れようと考えました。しかしこれも現場(対面)がメインだったことと教育トレーナーとしては駆け出しの私では、それも思う様に増やすことが出来ませんでした。そこでZoomの使い方を教えたりオンラインで運動指導をする等、色々なチャレンジをしてみましたが、収入として思う様に成り立つことはありませんでした。
これをきっかけに、オンラインでもできるコーチングにも力を入れようと考え始めました。当時、「自分の得意な事を仕事にしよう!」という起業ブームが私の周りで起きていて、知人の繋がりから知った起業女子のオンラインサロンに入りました。そこではオンラインビジネスの基本やセールスの方法を教えてもらい色々なチャレンジをしました。しかし、ビジネスを応援しあう仲間はできたものの、コーチングのクライアントとの出会いはありませんでした。そもそもコーチングが求められているコミュニティではなかった事と、私の努力の方向が違っていたんだとそこから離れる頃に初めて気づきました。とはいえ、当時は全力でやっているにも関わらず努力がまったく実らなくて、とても苦しかったです。その頃、私を見ていたマイコーチからは「その場所は、あなたには違うんじゃない?」と言われていたのですが、レセプターが開いておらず、自分がそれを受け取れていなかったですね(笑)
2021年秋ごろにやっと、このオンラインサロンでは自分の求めているものは手に入らないと判り、そのサロンに参加する事は辞めました。これからは自分が本来やるべきこと「コーチングスキルを上げること」に力を注ごうと決めました。そこで、コーチングを学んだコーチングプラットフォームでの活動に重点を置くとともに、国際コーチング連盟(アメリカのコーチング団体)のPCC(コーチングの資格)の取得に向かい合うことにしました。それからは、オンラインサロンで出会った起業女子の方や過去に体験セッションを受けてくれた方々を相手に、セッションをひたすら続ける事に集中しました。私は何か目標を定めるとそこに向かってコツコツとそれをやる、というパターンでここまで来ましたね。
1年半で500時間以上セッションを重ねてきた時に、PCCに合格するための基準のチェックをしてみた所、実はそれが満たせていない、ひいてはクライアントさんの為の有効な時間になっていなかった事に気がつき、愕然としました。これまでの苦労が報われないだけでなく、協力してくれた方々にも申し訳ないと思いました。そんなこともあり、改めてコーチングスクールの実践コースに参加して、スキルを磨くことに取り組もうとしているところです。
- Q.2.26年前に個人事業主として独立されました。西尾さんが、経営上で大切にされている事は、どんなことでしょうか?A.西尾様:シンプルに言うと、「約束やルールを守る」と言う事ですね。それは、普通の事、当たり前だと私は、思っています。
例えば、スポーツクラブでインストラクターが働く場合、レッスンごとのマニュアルがあります。マニュアルには「こういう時間配分で、定められた内容を実施する。上級・中級・初級別に、こういう事を提供する。こういう事はしない。」という様な事が記載されています。実は、このマニュアルを重視していない人も中にはいます。しかし私はマニュアルに記載されている事をきっちり守る事が当たり前だし、それがお客様の為にもなると思っています。また、提出物は必ず期限内に提出し、報告事項も必ずします。そのため、クラブ側から私は、決まりを守ってやってくれる人、きちんとやる人と思ってもらえていると思います。
「約束を守る」と言う事は結局、「信頼」を得る事になり、それが次に繋がると思っています。約束を守る事で、安心して任せてもらえる様になり、「別の仕事もお願いできるかな?」や「次もお願いしますね!」と言われた事もあります。相手の期待が広がっていくのを感じます。自分の中では、「約束を守る事は当たり前」と思っている事で、感謝されているという感じです。
でも、無理して約束を守ろうと頑張りすぎて失敗したこともあります。
月1回行う介護予防の仕事でのことです。その日の私は熱があり体調が非常に悪く、とても出来そうにない状態だったのです。しかし、会場の場所やその仕事がボランティアのような条件だったため、他の人にはお願いできないと自分で思い込んでいました。フラフラになりながらやり遂げた結果、肺炎になり、暫く休むことになってしまったのです。この時に、学んだことは「健康を害してもやる仕事はない」と、「人に助けを求めてもいい」と言う事です。そこまでする事で、逆に迷惑をかける事もあるな、と学んだ経験でした。
今は、「約束を守る」ことと同じように、出来ないことは「出来ない」という「誠実さ」「正直さ」も経営上は大切にしています。また「厳しいです」「ちょっと心配です」等と正直に言うことは、コーチとしても必要だな、と思っています。 - Q.3.スポーツクラブのインストラクターとして、コーチとして日々、多くの人と向き合われています。その西尾さんが、人と向き合う時に大切にしていらっしゃる事はなんでしょうか?A.西尾様:人と向き合う時に、目の前に起きている事だけでなく、その人の背景にまで想いを寄せる、という事を大切にする様になりました。
大きなきっかけになったのは、2023年の9月に福岡で開かれた「家族の基盤を強くする」という、ファンデーションのワークショップに参加した時の事です。
その直前に母を亡くしており、亡くす前の約1年間は介護など家族にとっても非常に大変な時期でした。正直に言うと母と私はお互いに認め合えない関係で、どちらかというと悪い想い出しかないと思っていました。
参加したワークショップでは、父や母はどんな人生を送ってきたのか、どんな人だったのか、どんな家庭で育ってきたのか等を言語化して深堀りをする、というワークがありました。どんどん言語化をしていく中で、母は私を産む前にどんな人生を送ってきたのか、という事に想いを馳せてみました。その時に、私が生まれてきた後の色々な出来事の中で、母があの様になった背景には色々な訳があったんだな、という事に初めて気がつき、思いを寄せることができたのでした。
これをきっかけに、目の前の人の言動を(嫌だなぁ)と思ったとしても、この人はどんな事を大事にしているんだろう、ここまでの人生にはどんな事があったのだろう、何があってこんな言動になっているんだろうと思いを馳せてみると、目の前の出来事に対して少し寛容になれる、冷静でいられる自分を体感する事に繋がりました。
新たに得た「その人の背景にまで想いを寄せる」という視点によって、相手の発する言葉に瞬時に感情的に反応するのではなく、言葉になっていない何かがあるのでは?と、背景にまで想いを寄せて、相手の言葉を一旦受取ってみる。その上で、こちらの発する言葉を選べたり、その場にふさわしい対応を取れる等、自分の選択肢が増えたかなと思っています。
自分の対応が変わった事で、向き合っている人もその感情が一旦ゆるんだり、落ち着いたりするイメージもあります。高齢者の方向けの介護予防の体操教室で、その時間中にご自身の知識を披露したり、つっこみを入れてくる人がいました。以前はそのつっこみに対して、顔では笑いつつ(うるさいな)とイラッとしたり、どうやって止めようかと考えていたんです。
それに対して、最近は、この人の色々な人生体験から親切で私に教えて下さるのだろう、このクラスを大切に思っていらっしゃるんだな、と思えた時に、素直に「あぁ、有難うございます!勉強になります。」って言えるようになっていたんです。
そんな風に私自身の対応が変わったら、そのつっこみを入れてこられた人も満足した感じで、嬉しそうにその体操教室に参加される様になった事がありました。「つっこみをいれてくる」などの、単に目の前で起きている事のみに一喜一憂するのではなく、その方は人生の色々な事を乗り越えて自分の健康の為に自ら動いて今ここにいる、そう考えたら「素晴らしいな」と思える様になったのも、この出会いによる経験からでした。
- Q.4.これからやりたい事はどんな事でしょうか?A.西尾様:今、言語化出来ている事では、コーチングを受ける人、学ぶ人が増えたらいいな、と言う事です。私はその何かしらに関われるといいな、と思っています。例えコーチングを受けなくても、自分の話を聴いてくれる人、自分の事を率直に話せる場を持ってほしいなと思います。本当はコーチをつけるのが良いと思っていますが、私の周りではまだまだメジャーでない、というのが現状だと感じています。
コーチングを知ってもらうには、まずは話す事で気持ちが楽になることや、安心できると実感出来ることが大事だと思います。その為に思う存分に話せる場、十分に聴いてもらえる場を提供出来たらと考えています。そういう場があれば、1人で抱えて苦しんでいる人が楽になるのではないかと思っています。
これを実感したのは、一つ目は私が母を亡くした直後に参加したワークショップが、絶対に話を聴いてもらえる、受け止めてもらえる場、安心安全の場であると確信していたというのがあります。実際に参加してみると、母を亡くし、介護をしてくれていた妹との関係も混乱して苦しかった時に、私の話を受け止めてもらえて、聴いてもらって本当に楽になりました。やはり人の力、場の力は素晴らしいなという経験でした。
二つ目は、母の介護で大変だった妹から電話があり、その時の色々な鬱憤を聴いてあげたことがありました。私はその話をただ聴いただけですが、最後に妹が「話を聴いてくれてありがとう!気持ちが楽になった。」って言ってくれた時に、やはり人にはこういう場が必要なんだなと実感しました。
話しをしたからといって、現状は何も変わりませんし、解決する訳ではありません。しかし、話す事で気が楽になったり、気持ちが整理される事で、ご自身でも何かに気が付く事もあり、何かしらの行動に繋がることもあります。でも、一般的には「口を挟まず、アドバイスもせず、ただ聴いてくれる」そういう場、ってないと思うんです。だからこそ話を聴く場を提供することや、その場に繋ぐことにも力を入れていきたいと考えています。
One Viewpoint
西尾さんは一極集中で、物事を一気に極めていくというパターンでここまで来られました。インストラクターデビューとしては遅い年齢で出発したのち、その誠実さから様々な機会を紹介されたり、ご自身で切り拓いたりしながら、26年間の経営者しての幹を更に太くされてきました。「誠実に」「正直に」約束をきちんと守り続ける西尾さんが、「その方の人生に想いを馳せ」ながら一心に話を聴いてくれる事で、背中を優しく押された人が、また自分の足で一歩ずつ歩き出す世界が見える様でした。
2024/5/16